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| 日本が島国である以上、我々は村社会の最たる性質『逃げることのできない人間関係』から解放されることはないだろう。 そんな息苦しい人間関係のなかで、本音を主張することは自殺に等しい行為だといえる。 かつて日本人は、そこに発生するドロドロとしたどうしようもない思い、怨念情念を民謡やわらべ唄に託して表現していた。 普段はとても言えないことでも「唄」という特別な表現形態の中では、訴えることができたようだ。おそらく「唄」をうたうことで怨念を娯楽化あるいは浄化し、精神の平静を保っていたのだろう。 さてそこで日本唯一無比の存在、犬神サーカス団である。 リーダー犬神明の弁によれば、彼等は欧米ナイズされた現在のロック&ポップスシーンに揺さぶりをかけ、『日本人にとっての唄の在り方』を再検討し、本来「唄」に宿っていたはずの魂を呼び戻すことをモットーに演奏活動をしているのだという。 なるほど確かに彼等の興行(ライヴ)では、日本人が「唄」に封じ込めて来た怨念情念をシャーマン犬神凶子が血飛沫のごとく解き放つ。 潜在意識にまで到達する彼女の声は、ときに優しく聴き手の心を癒し、ときに遺伝子に眠っていた残虐性を覚醒させるほどの神通力を持っている。 彼女の声に誰もが喜怒哀楽の感情をむき出しにされてしまうのだ。 私はあの声を聴く度、邪馬台国の卑弥呼を想わずにいられない。 犬神凶子こそ卑弥呼のように何万人、いや何億人もの群集を煽動できる声の持ち主であると断言しよう。 IT化が進むにつれ、人間同士のコミュニケーションがさらに希薄になりつつある現代。 この時代を呪うかのごとく放たれ犬神サーカス団の音楽は、新世紀に生きる人間が人間らしくあるためのメッセージであると私は解釈している。 (蛇縞武夫/民俗音楽研究家) 『犬神家~呪いの血筋』(2009.4.13更新) 四国は高知県の呪術師の家系、犬神家。その犬神家に代々伝わる呪術とは、生き埋めにした犬の目前に餌を置き三日三晩そのまま放置し、やがて犬が発狂する頃合を見計らってその首をはね、犬の首に宿った怨念で相手を呪い殺す...というものである。犬神家の七代目の太夫である犬神博士(いぬがみひろし)は、明治五年に蛇神筋の娘マツと結婚し、ジン、情次2号、凶子の三人の子供を産む。だがその以前に博士は女中ヨネに角の生えた子、明を産ませていたのだった。 やがて四人の子供たちは蛇娘(凶子)唐の奇術師(情次2号)学者犬使い(ジン)火吹き男(明)といった芸を身に付け、サーカス団として全国を興行して歩いた。 しかし子供たちは世間から「犬神憑き」と非難され、その挙げ句一八九四年に土中に生き埋めにされてしまったのである。 それから百年後の一九九四年、錬金術師・西田老の蘇生術によって四人は息を吹きかえし、バンド活動を始めるのであった。もともとロックという表現形態は、怨念を娯楽化し魂の自由を獲得することを目的とした音楽である。それは迫害されて殺された四人の呪いを世間に放電するのに最適な手段であったのだ。 誰もが目をそむける「心の闇」をあえて主題としているかのような犬神家の音楽は全国の病んだ少年少女たちの心にヒットし、たちまち数少ないアングラ・バンドの殿堂入りを果たすのであった。 二〇〇三年、犬神家の遺産相続の鍵を握る『犬神博士の遺言状』が発見された。以下その内容である。 「私の全ての財産、および神通力はすべて凶子に託すこととする。凶子は人類の大いなる祖先イヴ様の生まれ変わりであり、不老不死の細胞をもつ最初の新人類なのである。兄弟たちは力をあわせ、凶子の言葉を七つの戒律とともに世に広めるがよい。そうすればやがて、世界はお前たちのものになるであろう」 ....しかし三年がかりの鑑定の末、この遺言状が偽物である事が判明した。道理でいつまでたっても世界は彼等のものにならなかった訳だ。いいや世界どころか生活すらものにならなかった。 途方に暮れつつ、尚も興行巡業を続ける犬神サーカス団にあるとき神のお告げがあった。 なんと団員たちが同時に同じ夢を見たのだ。 夢の中で金色の眼をした老人は言った。 「海の底に住む赤く輝く魚を探すのじゃ。そうすればやがて、世界はお前たちのものになるであろう」 翌朝、さっそく楽屋で会議が開かれた。 「赤く輝く魚って、ヒブナ?」 「いやいや海の魚だから、メバルとか?」 「マダイじゃないかしら? でも、どれもピンと来ないわねぇ」 (しばし沈黙) 「うむ!? あれだ! あの魚だ!」 「おおっ! それだー! 間違いない!」 「ああ、あれかー!」 「な~んだ、あの魚だったのね!」 四人の脳裏を一匹の魚がよぎったのは二〇〇六年七月のことであった。 その魚とは!? 二〇〇六年七月、四人の脳裏をよぎった一匹の魚。 その名はキンメダイ! さっそく団員達はキンメダイを探すために事務所を構えた。 その名もオフィス・キンメダイ! 団員達はキンメダイを誘き寄せるための音楽を発表するためにレーベルを作った。 その名もキンメダイ・レコード! 団員たちはそれから馬車馬のようにキンメダイを探し続け、気がつけば三年が過ぎていた。 二〇〇九年一月一日、長男の明は昇る朝日に誓った。 「今年こそは、井の中の蛙で終わらないぞ!」 そう、今年は犬神サーカス団員たちが生き埋めから蘇生して十五年目。 もしこのタイミングでキンメダイを手に入れる事が出来なければ、百年ぶんの年月が団員たちに襲いかかる。 細胞は一挙に腐敗し、やがて塵となり、風に吹かれて消えてなくなってしまう。 特別な思いを抱きつつも崖っぷちに立たされた団員たちの運命やいかに!? 二〇〇九年四月、崖っぷちに立たされた団員たちが、 足元の絶壁斜面を覘いてみると、そこは一面のイチゴ畑だった。 「わー美味しそう!」 「なんだイチゴかよ。ヒコったなぁ」 「これはつまり15周年だから、1と5でイチゴなんだよ」 「うぇいうぇい~」 さっそく団員たちはイチゴ畑に降り立ち、 真っ赤に実ったイチゴをむさぼり食べた。 食べながら、ふと凶子が駄洒落を思いついた。 「イチゴだけに美味い!の一語につきるわね」 「うぇいうぇい~」 情次2号も思いついた。 「イチゴとの出会いは大切にしよう。一期一会だよ」 「うぇいうぇい~」 ジンも思いついた。 「イチゴミルクを飲むためのストロー減りましたね」 「うぇいうぇい~」 そして明は蘇生15周年を記念するかような、 聴いた誰もが笑い死にする程のスペシャルなアニバーサリー駄洒落を思いついてしまった! そんな明の口がついに開いた! 「イチゴの......」 ......つづく。 |
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